農園の四季





人は、めぐる季節で時の流れを知る。
心に区切りをつけることができる。

花を眺め、木々をながめて一年を過ごしていると、
季節の移り変わりはなんと人の一生と重なっているものかと思う。

来るべき冬を待ちながら、
風に舞う落ち葉を眺め、カサカサと枯れ葉を踏みしめる、
不思議に穏やかな日々がまだそこにある。
人の一生にも、そんな季節があるだろうか。

私達人間を含めた、目の前にあるすべてのものの存在は、
はるかな時を超え、今ここに在る。

                  星野道夫  (最後の楽園より)





田舎では星が降ります頭上注意   山里有希子作 伊藤園新俳句大賞

田舎の自然の中で、ゆとりを持って俳句のまねごとなども
楽しみたいと思います。  熱海伸男


      

2007年                       2008年   

年新た今熟年の手を合わす          初春や般若心経唱えたり
雉鳴くや畝起こす手の止まる時        花見山夫婦の時を刻む時
見上げれば天空の大河流れおり       初燕ふるさとの無き旅人よ
彩色やゆっくりとゆっくりと里の秋      空梅雨やブルーベリーの色褪せる


      
     
      2009年                     2010年 

うぐいすや里山のいろ癒し色        去年今年いま一瞬の鷹の舞い
雷様と恐れられたり雨走る          風清か下へ下へと深呼吸
甲子道の紅葉黄葉や夫婦旅        分蜂の影姿なき巣箱かな
秋祭りブルーベリーの幟立て       カナカナやぬる湯に浸かり猛暑過ぐ


     

2011年              2012年

原発はおろか者なり春の雷   還暦の妻の作りし雑煮かな
百花咲く癒しの刻の余震かな  剪定や木の根明るき藍苺 
天災治まり怒りのレンギョ燃ゆ  齷齪と千匹ほどの蟻出  
藍苺生きとし生ける寄生虫  黙々と草取る妻の背中に汗


        
 

2013年            2014年
    寒雀朝一番の訪問者         寒の空わらじと魔除け水祝儀
羽根音のひときは高き熊ン蜂      老鶯や飯坂の湯に浸りけり
掘り起こせ今宵の鍋の葱五本      藍苺摘む指先に雷響く 
空清く雉の横切る去年今年       翁媼の杉にやさしく雪の降る



サラリーマン時代に書き綴った句を思いだしています。

みなとみらい                    吾亦紅   

夏盛ん汗と野球と吾子の笑み        吾亦紅世々の流れにゆらめける
ぐあっとオレンジ色の月のぼる        秋風や壁に文読む翁の背に  
ラ・フランス香るぐちゃぐちゃの完熟柿    夕霧や大気も昏い檻の中   
芋焦げてわあーとはなやぐ子等の声    ずんだもち仙石線の駅の色   
吾子の手の先に群れ飛ぶ冬かもめ     短日や人影のなき水族館   
遠霧笛ふたつみっつや去年今年      小春日や悠々と舞うシードラゴン

砂漠の夜                      父逝く   

大砂漠緑陰に清き流れあり        聖路加の加護を求むべし五月尽
炎天下アカシアの棘ラクダはむ      点滴に命あずけて梅雨入りかな
風炎やベドウィンのシワ深く        夏空に雲ひとつ無き涅槃かな
烈日や痩せたる蝿はうごかざる      万緑やただ椅子一つ残りけり
熱き砂鈴音は闇より近づけり        窓拭くや深秋の日の静けさに
落雷や茫々砂漠に轟ける         手をつきて冥加の華をながめたり



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